縄文のウイルス:遅れた感染症対策/中 長崎・鹿児島の取り組み

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 ◇授乳やめ感染断つ 全妊婦に無料で抗体検査、予防効果大きく

 HTLV-1ウイルス(ヒトTリンパ球向性ウイルス1型)による病気は成人T細胞白血病(ATL)だけではない。HAM(HTLV-1関連脊髄(せきずい)症)という進行性の病気も引き起こす。下半身がまひし、排尿障害が起きるのが主な症状で、次第に歩けなくなる。有効な治療法はない。

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 甲信越地方に住む近藤よう子さん(57)=仮名=と次女の美紀さん(25)=同=は親子でHAMを発症した。

 美紀さんが振り返る。「小学校高学年ぐらいから階段がリズムよく上がれなかった。走ると足がもつれ、体育もやりづらかった」

 地元の国立大に進学し20歳の時、HAMと診断され、医師は口にした。「お母さんから感染したのでは」

 その通りだった。

 病名が分かり、薬を飲めば治ると思っていた。だが、医師は病状のことを詳しく語らなかった。気になり、インターネットで調べた。

 --歩きづらくなって、車椅子になって、悪い場合は最後、寝たきりになる......。症状を知ったその衝撃が今も脳裏に刻まれている。

 美紀さんは、自宅では壁を伝い、外ではつえをついて一歩一歩進む。強風が吹けば、歩けない。週に2、3回、塾講師のアルバイトをしているが、帰宅後はぐったりする。

 よう子さんは悔やんだ。「赤ちゃんの時から全然手のかからない子だった。私がキャリアーと分かっていれば、おっぱいをあげなかったし、娘もHAMにならずに済んだのに」

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 HTLV-1ウイルスは母乳を通じて子供にうつる。それを防ぐ手立てはあるのか。

 長崎県は87年、病院の産科、小児科などの協力で、母子感染予防のための連絡協議会を設立した。県内全域で全妊婦の抗体検査を実施し、ウイルスが見つかれば授乳を極力しないようすすめている。

 効果は大きかった。

 長崎大が87~98年、キャリアーの妊婦の子への感染率を調べた。妊婦が6カ月以上母乳を与えると感染率は20・3%、6カ月未満の授乳は7・4%だった。一方、授乳なしだと2・5%と大きく下がる。この20年で県は1000人以上の感染を防ぎ、約50人の子がATLなどにならずに済むという成果を上げた。

 ただ、告知や説明の難しさもある。ウイルスが見つかれば、かかりつけの産科主治医が告知する。断乳か短期の授乳で子供にうつりにくくなることを説明したうえで、断乳するなら出産後に母乳分泌抑制剤を与える。

 「ただ、病状を細かに伝え過ぎると不安をあおりかねない」と同連絡協議会会長で長崎大産婦人科の増崎英明教授は言う。有効な治療法がないだけに、こうもアドバイスするという。「ウイルスを家系の中から断ち切ることがあなたの意思でできます」

 鹿児島県も97年から「ATL制圧10カ年計画」を実施し、感染防止の成果を上げた。独自にATL調査もしている嶽崎俊郎・鹿児島大大学院教授は言う。

 「断乳か授乳を短期にすることで子供への感染リスクが確実に下げられることがはっきりした」【高橋咲子、小島正美】
 ◇キャリアー、全国に拡散

 HTLV-1ウイルスのキャリアーは九州や沖縄にとどまらず、全国的な広がりを見せている。厚生労働省研究班の約20年ぶりの全国調査(07年)では、関東、中部など大都市圏で増え、九州・沖縄の割合は全体の半分以下に減った。人口移動と感染予防対策の遅れが全国への拡散をもたらしたようだ。

 母子感染の予防と早期発見が急務だが、長崎県は08年から無料の妊婦健診にウイルス検査を組み込んだ。その結果、ウイルス検査の受診率は71・8%(06年)から97%(08年)に急増した。鹿児島県でも同様に検査は無料だ。

 また、妊婦の理解を深めることも課題の一つだ。鹿児島の調査では、キャリアーと分かった215人中45人が子への感染のリスクが高い長期授乳を選んでいる。キャリアーの白血病発症率が2~4%と低いことや、「家族の理解が得られない」「子供が人工乳を飲んでくれない」などの事情があったという。

 8日公表された厚労省調査では、4月1日現在、公費負担で妊婦の抗体検査をしている市区町村は全国で約28%にとどまり、全県実施は長崎など九州の4県と岩手、高知など計8県だけだ。

 長崎大の増崎教授は「検査の無料化はもちろん、医療現場での告知の仕方、キャリアーのフォローも肝要だ」と話し、総合的な行政対応を求めている。

※毎日新聞 2010年6月10日 東京朝刊

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このページは、caaが2010年8月 7日 16:45に書いたブログ記事です。

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