縄文のウイルス:遅れた感染症対策/下 「風土病」国が対応放置

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 ◇病院転々、診断やっと
 ◇九州以外、医師の認識低く/治療費、保険外の場合も

 「ウイルスの病気なのに診断がつかず、病院を転々とする。本当につらい」。HTLV-1関連脊髄(せきずい)症(HAM)や成人T細胞白血病(ATL)の患者の切実な声だ。

 5月中旬、患者、家族らでつくるNPO法人「はむるの会」(山越里子理事長)の1周年総会が神奈川県内の病院で開かれた。昨年6月に設立され、情報交換などをしている。

同会の鈴木芳子さん(59)が振り返る。「たった15分の朝礼で立っていられなくなり、48歳のとき、デパートの販売員をやめました」

 最初は整形外科を受診したが、医師は「運動をするように」とそっけなかった。その後、関東一円の病院を次々と受診したが、徐々に歩けなくなった。親類の元医師から「脊髄に異常があるのでは」とのアドバイスを受けやっと病院でHAMと診断された。デパートをやめて5年たっていた。

 同会理事でHAM患者の石母田(いしもだ)衆さん(64)は診断までに7年かかった。石母田さんは98年に家族で血液検査を受け、6人兄弟のうち次男の石母田さんを含め4人の感染が分かった。その後、三男は03年、ATLで亡くなった。それでも、医者からHAMの説明を受けたことはなかった。

 石母田さんは医師の認識の低さを嘆く。「病院にかかるたびにキャリアーだと告げたのに、『HAMの疑い』と言われるまであまりに長すぎる」

 HAMの研究をしている聖マリアンナ医科大の山野嘉久准教授によると、頸椎(けいつい)の異常と診断され、首の手術を受けた患者も少なくないという。「(患者の多い)鹿児島なら、MRI(磁気共鳴画像化装置)など画像の所見に比べて症状の出方が強ければHAMを疑って血液検査をするだろう」。しかし、九州以外の診断体制は遅れている。

 --成人T細胞白血病 母乳感染説を検証

 86年12月の本紙1面の見出しだ。感染防止に向けた国の早急な対応の必要性が報じられた。当時研究者の間でもその機運が高まっていた。だが、90年の厚生省(現厚生労働省)研究班の報告書が風向きを変える。

 「感染者は自然に減少し、将来は消滅する」としてキャリアー率の高い地域以外の対策は不要とした。その後「研究費は減り、研究者も離れていった」と山野准教授は振り返る。

 あれから約20年、キャリアーは全国に広がった。HAM患者で「日本からHTLVウイルスをなくす会」(鹿児島市)代表理事の菅付加代子さん(53)は訴える。「『発症率が低い』『風土病だ』として緊急性が軽視されたため対策が遅れた。私たちはもう待てない」

 一方、患者には治療費の負担が重くのしかかる。今村病院分院(鹿児島市)の宇都宮與(あたえ)・院長によると、ATL治療ではエイズ患者と同じ治療薬を使うことがある。だが、薬害などによるエイズ患者は医療費が無料になるが、ATL患者は保険が利かず、自己負担となるケースがある。

 さらに、国の研究費助成は、同じ感染症のC型肝炎に比べて100分の1程度だ。日ごろATL患者と接している宇都宮院長は「キャリアーの段階で発症を抑える治療法の研究も必要」と、せめて10億円以上の研究費があればと訴える。

 キャリアーを減らし、患者を救うことはできるのか。渡辺俊樹・東大大学院教授(HTLV-1研究会会長)は「108万人のキャリアーは、健康行政上の大きな課題だ」と指摘する。そのうえで全妊婦の検診の実現、治療・研究対策の充実を求めている。

 「先進国では日本に特有のウイルスなので、日本が率先して対策をすべきだ」

 

※毎日新聞 2010年6月11日 東京朝刊

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このページは、caaが2010年8月 7日 16:45に書いたブログ記事です。

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