2010年8月アーカイブ

子育て世代を対象にしたウェブサイト「食の安心パトロール(略称・食パト)」を東京都が開設した。食の安全・安心情報を幅広く提供していくことが目的だ。

 「調理法で予防できる食中毒」「知っておきたい子供の食物アレルギー」「食品添加物とのつきあい方」などのテーマについて、専門家が分かりやすく解説する。

 また、「お弁当のおにぎりを作る時、衛生面に配慮してやっていることがありますか?」など、1000人の子育て世代に聞いた意識調査の結果なども紹介している。

 都食品監視課は「子育て世代の関心が高いテーマについて、専門家からの役に立つアドバイスを提供していきたい」としている。

 同サイトのアドレスは、http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/shokupato/index.html。携帯電話からも接続して閲覧することができる。

 

※(2010年3月30日 読売新聞)

ミニカップタイプのこんにゃく入りゼリーによる窒息事故に関し、消費者庁の泉健太内閣府政務官は15日、「法規制は現段階では非常に難しい」と述べ、ゼリーの形状や大きさなどについて法規制を行わない意向を示した。7月末までに最終的な結論を出す方針だ。

 内閣府の食品安全委員会が10日、「餅に次いで、あめと同程度に窒息事故頻度が高い」という評価書をまとめ、消費者庁に通知。評価書の内容などを受けて、泉政務官は「規制をするには何らかの基準が必要だが、その基準が明確になっていない」と判断した。

 一方、15日、全国の消費者団体などで組織する「全国消費者行政ウオッチねっと」は記者会見し、法的整備を急ぐよう訴えた。

 

※(2010年6月16日 読売新聞)

 「がんを知る全国フォーラムin長野」(がんに負けない社会づくり長野県民大会実行委員会主催、毎日新聞社共催、アフラック協賛)が3日、長野市のホクト文化ホールで開かれ、約1000人が熱心に聴き入った。

 毎日新聞でコラムを連載する東大病院放射線科の中川恵一准教授が基調講演。「がんは、生活習慣の改善による予防と、検診による早期発見の2段構えの対策が必要だ」と訴えた。09年に長女の勝野七奈美さん(当時29歳)を肺がんで亡くしたタレントのキャシー中島さんは特別講演で、闘病時の家族と患者のかかわり方などを語った。信州大病院の小池健一院長とフリーアナウンサーの関谷亜矢子さんも加わった4人で「がんのひみつ」と題したトークもあった。

※毎日新聞 2010年7月4日 東京朝刊

 ◇授乳やめ感染断つ 全妊婦に無料で抗体検査、予防効果大きく

 HTLV-1ウイルス(ヒトTリンパ球向性ウイルス1型)による病気は成人T細胞白血病(ATL)だけではない。HAM(HTLV-1関連脊髄(せきずい)症)という進行性の病気も引き起こす。下半身がまひし、排尿障害が起きるのが主な症状で、次第に歩けなくなる。有効な治療法はない。

  □  □

 甲信越地方に住む近藤よう子さん(57)=仮名=と次女の美紀さん(25)=同=は親子でHAMを発症した。

 美紀さんが振り返る。「小学校高学年ぐらいから階段がリズムよく上がれなかった。走ると足がもつれ、体育もやりづらかった」

 地元の国立大に進学し20歳の時、HAMと診断され、医師は口にした。「お母さんから感染したのでは」

 その通りだった。

 病名が分かり、薬を飲めば治ると思っていた。だが、医師は病状のことを詳しく語らなかった。気になり、インターネットで調べた。

 --歩きづらくなって、車椅子になって、悪い場合は最後、寝たきりになる......。症状を知ったその衝撃が今も脳裏に刻まれている。

 美紀さんは、自宅では壁を伝い、外ではつえをついて一歩一歩進む。強風が吹けば、歩けない。週に2、3回、塾講師のアルバイトをしているが、帰宅後はぐったりする。

 よう子さんは悔やんだ。「赤ちゃんの時から全然手のかからない子だった。私がキャリアーと分かっていれば、おっぱいをあげなかったし、娘もHAMにならずに済んだのに」

  □  □

 HTLV-1ウイルスは母乳を通じて子供にうつる。それを防ぐ手立てはあるのか。

 長崎県は87年、病院の産科、小児科などの協力で、母子感染予防のための連絡協議会を設立した。県内全域で全妊婦の抗体検査を実施し、ウイルスが見つかれば授乳を極力しないようすすめている。

 効果は大きかった。

 長崎大が87~98年、キャリアーの妊婦の子への感染率を調べた。妊婦が6カ月以上母乳を与えると感染率は20・3%、6カ月未満の授乳は7・4%だった。一方、授乳なしだと2・5%と大きく下がる。この20年で県は1000人以上の感染を防ぎ、約50人の子がATLなどにならずに済むという成果を上げた。

 ただ、告知や説明の難しさもある。ウイルスが見つかれば、かかりつけの産科主治医が告知する。断乳か短期の授乳で子供にうつりにくくなることを説明したうえで、断乳するなら出産後に母乳分泌抑制剤を与える。

 「ただ、病状を細かに伝え過ぎると不安をあおりかねない」と同連絡協議会会長で長崎大産婦人科の増崎英明教授は言う。有効な治療法がないだけに、こうもアドバイスするという。「ウイルスを家系の中から断ち切ることがあなたの意思でできます」

 鹿児島県も97年から「ATL制圧10カ年計画」を実施し、感染防止の成果を上げた。独自にATL調査もしている嶽崎俊郎・鹿児島大大学院教授は言う。

 「断乳か授乳を短期にすることで子供への感染リスクが確実に下げられることがはっきりした」【高橋咲子、小島正美】
 ◇キャリアー、全国に拡散

 HTLV-1ウイルスのキャリアーは九州や沖縄にとどまらず、全国的な広がりを見せている。厚生労働省研究班の約20年ぶりの全国調査(07年)では、関東、中部など大都市圏で増え、九州・沖縄の割合は全体の半分以下に減った。人口移動と感染予防対策の遅れが全国への拡散をもたらしたようだ。

 母子感染の予防と早期発見が急務だが、長崎県は08年から無料の妊婦健診にウイルス検査を組み込んだ。その結果、ウイルス検査の受診率は71・8%(06年)から97%(08年)に急増した。鹿児島県でも同様に検査は無料だ。

 また、妊婦の理解を深めることも課題の一つだ。鹿児島の調査では、キャリアーと分かった215人中45人が子への感染のリスクが高い長期授乳を選んでいる。キャリアーの白血病発症率が2~4%と低いことや、「家族の理解が得られない」「子供が人工乳を飲んでくれない」などの事情があったという。

 8日公表された厚労省調査では、4月1日現在、公費負担で妊婦の抗体検査をしている市区町村は全国で約28%にとどまり、全県実施は長崎など九州の4県と岩手、高知など計8県だけだ。

 長崎大の増崎教授は「検査の無料化はもちろん、医療現場での告知の仕方、キャリアーのフォローも肝要だ」と話し、総合的な行政対応を求めている。

※毎日新聞 2010年6月10日 東京朝刊

 ◇病院転々、診断やっと
 ◇九州以外、医師の認識低く/治療費、保険外の場合も

 「ウイルスの病気なのに診断がつかず、病院を転々とする。本当につらい」。HTLV-1関連脊髄(せきずい)症(HAM)や成人T細胞白血病(ATL)の患者の切実な声だ。

 5月中旬、患者、家族らでつくるNPO法人「はむるの会」(山越里子理事長)の1周年総会が神奈川県内の病院で開かれた。昨年6月に設立され、情報交換などをしている。

同会の鈴木芳子さん(59)が振り返る。「たった15分の朝礼で立っていられなくなり、48歳のとき、デパートの販売員をやめました」

 最初は整形外科を受診したが、医師は「運動をするように」とそっけなかった。その後、関東一円の病院を次々と受診したが、徐々に歩けなくなった。親類の元医師から「脊髄に異常があるのでは」とのアドバイスを受けやっと病院でHAMと診断された。デパートをやめて5年たっていた。

 同会理事でHAM患者の石母田(いしもだ)衆さん(64)は診断までに7年かかった。石母田さんは98年に家族で血液検査を受け、6人兄弟のうち次男の石母田さんを含め4人の感染が分かった。その後、三男は03年、ATLで亡くなった。それでも、医者からHAMの説明を受けたことはなかった。

 石母田さんは医師の認識の低さを嘆く。「病院にかかるたびにキャリアーだと告げたのに、『HAMの疑い』と言われるまであまりに長すぎる」

 HAMの研究をしている聖マリアンナ医科大の山野嘉久准教授によると、頸椎(けいつい)の異常と診断され、首の手術を受けた患者も少なくないという。「(患者の多い)鹿児島なら、MRI(磁気共鳴画像化装置)など画像の所見に比べて症状の出方が強ければHAMを疑って血液検査をするだろう」。しかし、九州以外の診断体制は遅れている。

 --成人T細胞白血病 母乳感染説を検証

 86年12月の本紙1面の見出しだ。感染防止に向けた国の早急な対応の必要性が報じられた。当時研究者の間でもその機運が高まっていた。だが、90年の厚生省(現厚生労働省)研究班の報告書が風向きを変える。

 「感染者は自然に減少し、将来は消滅する」としてキャリアー率の高い地域以外の対策は不要とした。その後「研究費は減り、研究者も離れていった」と山野准教授は振り返る。

 あれから約20年、キャリアーは全国に広がった。HAM患者で「日本からHTLVウイルスをなくす会」(鹿児島市)代表理事の菅付加代子さん(53)は訴える。「『発症率が低い』『風土病だ』として緊急性が軽視されたため対策が遅れた。私たちはもう待てない」

 一方、患者には治療費の負担が重くのしかかる。今村病院分院(鹿児島市)の宇都宮與(あたえ)・院長によると、ATL治療ではエイズ患者と同じ治療薬を使うことがある。だが、薬害などによるエイズ患者は医療費が無料になるが、ATL患者は保険が利かず、自己負担となるケースがある。

 さらに、国の研究費助成は、同じ感染症のC型肝炎に比べて100分の1程度だ。日ごろATL患者と接している宇都宮院長は「キャリアーの段階で発症を抑える治療法の研究も必要」と、せめて10億円以上の研究費があればと訴える。

 キャリアーを減らし、患者を救うことはできるのか。渡辺俊樹・東大大学院教授(HTLV-1研究会会長)は「108万人のキャリアーは、健康行政上の大きな課題だ」と指摘する。そのうえで全妊婦の検診の実現、治療・研究対策の充実を求めている。

 「先進国では日本に特有のウイルスなので、日本が率先して対策をすべきだ」

 

※毎日新聞 2010年6月11日 東京朝刊

 ◆人工尿道括約筋 前立腺手術に伴う括約筋損傷患者に埋め込み。
 ◇重症の尿失禁に効果 「生活支障なし」9割、長い耐用年数/保険外で高額

 東京都東村山市内に住む男性(73)は、8年前から尿失禁に悩んできた。症状は、前立腺がんによる前立腺摘出手術を受けた直後に始まった。多いときで1日に尿漏れ用のパッド3枚以上を使う。主治医のアドバイスで、肛門(こうもん)を締めて骨盤底筋を鍛える運動を毎日50回以上続けた。子どもの夜尿症に効くという抗うつ剤も処方された。パッドは1日1枚程度まで減ったが、外出時は予備のパッドが手放せず、趣味のアウトドアを楽しむ時間も減った。

 そんな折、主治医に人工尿道括約筋の埋め込み手術を勧められた。高額の費用や、異物を体内に入れることへの抵抗感から迷ったが、「尿漏れから解放されたい」という気持ちが勝った。手術の約2カ月後に使えるようになり失禁はほぼ解消。息むと少し漏れることはあるがパッドは不要という。男性は「悩みがうそのよう」と声をはずませる。

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 尿道括約筋は、ぼうこうの出口付近にある筋肉で、普段は締まっていて尿漏れを防ぎ、排尿時は脳の指令を受けて緩む。前立腺の摘出や、前立腺肥大症による内視鏡手術の際、隣接する括約筋の一部が傷付くと、慢性的な尿漏れにつながることがある。

 東北大病院泌尿器科の荒井陽一教授によると、国内で前立腺全摘手術は年間2万件ほど実施され、その1~3%にあたる200~600人に重い尿失禁が残ると推定される。荒井教授は「重症だと常にオムツが必要になり、仕事をやめるなど社会生活に支障をきたす人が多い」と指摘する。

 東京女子医科大東医療センター泌尿器科の巴ひかる講師は「尿道括約筋損傷による男性の尿失禁の治療法には、骨盤底筋の電気刺激療法や薬物療法などもあるが、重症の場合、効果は期待しにくい」と話す。

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 人工尿道括約筋は米国製。主な部品は、尿道に巻き付ける「カフ」と、それぞれぼうこう付近、陰のうに埋め込む「圧力調整バルーン」と「コントロールポンプ」。生理的食塩水で満たされたカフが尿道を締め付け、括約筋の代わりを果たす。排尿時は、ポンプを陰のうの上からつまむと、カフ内の水がバルーンに移り、締め付けが緩んで尿が出る。バルーンの水は排尿後、自然にカフに戻る。

 製品の国内総販売代理店「タカイ医科工業」(東京都)によると、過去約40年間にわたり世界で13万人以上が使用。米国では年間四千数百件の埋め込み手術が実施されている。

 日本では94年以降に年間平均7件ほど実施されてきた。器具が新モデルに切り替わった際に薬事法の再申請が必要になり、07年から約2年間、供給が途絶えたが、昨年9月に承認。すでに6施設で計23件(21日現在)の手術が実施された。保険は適用されず、器具代(約150万円)と手術・入院費などで計180万~200万円ほどかかる。ただし、国から先進医療の指定を受けた施設では、一部で保険が適用され、自己負担は170万円前後だ。

 手術は1~2時間で、全身麻酔で行う。入院は通常1週間弱。荒井教授が08年にまとめた国内調査では、手術後に排尿状況を評価できた58人のうち約47%は失禁が完全に治り、尿漏れが多少残る人を含め約91%は「生活に支障がない」と答えた。さらに全64人のうち7割が10年以上使用を継続していた。器具の細菌感染などのため再手術で取り出したケースも2割であったが、荒井教授は「新モデルを使った最近の成績はかなり向上しているだろう」と予想する。

 巴講師は「治療法はあるのであきらめないで」と呼び掛ける。日本泌尿器科学会は、荒井教授を中心に人工尿道括約筋認可推進委員会を設置し国に保険適用を求めている

 

※毎日新聞 2010年6月23日 東京朝刊

 「私が診た患者も何人も命を絶った。失敗を繰り返してここまで来た」。医療機関で大量に処方された向精神薬で自殺や自傷する人が増えている問題で、京都市の精神科診療所院長が毎日新聞に体験を語った。多くの精神科医が患者の自殺に直面してきたが、その「教訓」を伝える人は少ない。一人の患者が立ち直ったことが医師の今を支えている。【堀智行】
 ◇精神科医師が見つけた答え

 奥井滋彦院長(50)が京都市内の精神科病院に勤務していた駆け出しのころのことだ。自殺をほのめかす電話があれば、深夜でも自宅まで駆け付けた。だが深くかかわり過ぎると患者は医師に寄りかかり、つながりを求めて自傷を繰り返す。薬を大量に出せば、薬に依存し症状は悪化する。重篤な患者の何人かが過量服薬などで命を絶った。自分を責め、悩んだ。

 見つけた答えが「薬を減らし、患者の力を信じ見守る」こと。向精神薬を長年処方され、薬物依存症になっている患者にはその事実を伝え、治療の道筋を説明した。

 そのころ出会ったのが患者の加藤武士さん(45)。加藤さんは薬物依存症のため精神科病院の入退院を繰り返していた。奥井医師は、こうした人を支えるNPO「ダルク」に通うよう勧めた。加藤さんは薬を断った。だがこころの穴は埋まらない。失望し大量の処方薬を飲んで自殺を図った。一命を取りとめ、頼ったのも奥井医師だった。

 奥井医師は当直の晩になると、部屋に呼んだ。毎回2時間、生い立ちに耳を傾けた。実母と育ての母の2人がいたこと。育ての母に感謝する一方、生い立ちから学校でいじめられ、非行に走ったこと。寂しさを紛らわしたのが覚せい剤や処方薬だった。2カ月かけ、話し終えた時に奥井医師は言った。「よう今日まで生きてきたな」。理解してくれる人がそばにいる。それが回復への第一歩だった。

 自殺を図る患者の対応が難しいと多くの精神科医は口をそろえる。奥井医師は後輩から相談を受けるたび「いっぺん患者に巻き込まれてみろ」と助言する。遠くから見ていても分からない。巻き込まれて見えるものがあると思うからだ。

  ◇  ◇

 加藤さんは今「京都ダルク」の施設長として、薬物を断とうと格闘する仲間の支援を続ける。奥井医師と出会って18年。患者を亡くし、苦しむ姿も見てきた。加藤さんは言う。「医者は患者の前では無力になれない。だから薬に頼ってしまう。だけど、無力な時もあると受け入れれば、本当の医者と患者の距離が見えてくるんじゃないでしょうか」

 

※毎日新聞 2010年6月25日 東京朝刊

 ◇自殺問題に詳しい防衛医大防衛医学研究センターの高橋祥友教授(行動科学)の話

 「過量服薬は勝手にやることだからやむを得ない」という話ではない。医師は「命を絶つために薬を渡しているのではない」というメッセージを伝えなければならない。また、前回の診察で出した薬を持ってきてもらい、ためていないかチェックしたり、通院期間を短くして薬を多く出さない工夫も必要だ。

※毎日新聞 2010年6月26日 東京朝刊

 日差しが強まる季節。紫外線から肌を守る日焼け止め(サンスクリーン)は、今やレジャーだけでなく、日常生活にも欠かせない。一方で、使い方や商品選びには分かりにくい点も多い。専門医やメーカーに聞いた。【田村佳子】
店頭には多種多様な日焼け止めが並ぶ=神奈川県川崎市のコクミンドラッグアゼリア店で
店頭には多種多様な日焼け止めが並ぶ=神奈川県川崎市のコクミンドラッグアゼリア店で

 Q・塗る量は?

 A・最近の日焼け止めは使用感が良く、さらっと伸びるものが多い。半面、伸ばしすぎて、塗布量が少なくなりがちだ。

 製品に表示されたSPFやPAの値は、肌1平方センチ当たり2ミリグラムを塗った時のUV(紫外線)防止効果。目安は、腕なら縦に2、3本の線状に置いた量で、脚なら3、4本程度。顔は1円玉大の2個分と、意外に多い。東京慈恵医大付属第三病院の皮膚科診療部長、上出良一医師は「一般的にはSPF表示の規定量の2分の1~3分の1しか塗られていない」と指摘する。
日焼け止めクリームの塗り方
日焼け止めクリームの塗り方

 半分の量しか塗らないと、防止効果は表示の約3分の1に落ち、特に、数値の大きいものほど効果の落ち方も大きいという。「必ずしも規定量を塗る必要はないが、薄めに塗るなら、UV防御効果を過信しないこと」と上出医師は話す。
日焼け止めクリームの塗り方
日焼け止めクリームの塗り方

 Q・塗り直しは?

 A・きちんとUV防御するには、塗り直しが重要になる。日焼け止めは、汗で落ちやすいのが弱点。防水タイプのウオータープルーフでも、こすれて落ちてしまう。2~3時間ごとに塗り直すのが理想だが、特にタオルなどで汗をふいた時は、塗り直した方がいい。

 顔の場合は、UV効果のある下地などで日焼けを防ぐのが一般的だが、化粧を落としてまで塗り直すかは悩みどころ。カネボウ化粧品スキンケア研究所の松江浩二・主任研究員は「そもそも化粧が落ちないように顔に触らない人が多く、他の個所より落ちにくい。ファンデーションを塗り直せば日焼け止め効果としてはOK」と話す。

 Q・落とし方は?

 A・「SPF50+」など強い日焼け止めやウオータープルーフタイプは、せっけんでは落ちにくい。コーセー広報課の橋本美佳さんは「きちんと落とさないと目に見えない膜が肌に蓄積するので、注意して」と呼びかける。

 クレンジング剤が必要なものは製品の裏などに表記があるのでそれに従うとよい。橋本さんは「日常使いなら強力なものを選ばず、せっけんで落ちる程度の日焼け止めを使うのもポイント」と話す。

 Q・何年も使える?

 A・日焼け止めは消費期限などの表示がない商品がほとんど。前年の余りも使えるのだろうか。上出医師は「レジャー用の日焼け止めは暑い場所に持っていくので変性しやすい。基本的に1シーズンものと考えるべきだ」という。

 資生堂で日焼け止め製品を担当する須貝展子さんは「翌年以降でも日焼け止め効果は落ちないが、液が劣化することがある」と話す。翌年に持ち越す場合は、酸化を防ぐためボトルの口元をしっかりふいて、日光の当たらない場所で保管しておく。「油っぽくなったり、水が出るのが劣化のサイン。よく見極めて判断して」と須貝さんは話す。

 

※毎日新聞 2010年6月29日 東京朝刊

 ◇悪玉コレステロールとの比率改善を/禁煙、運動が効果的

 そろそろ職場で行った健康診断の結果が分かるころ。気になるコレステロール値に悪玉(LDL)と善玉(HDL)があるのはよく知られているが、意外に見落としやすいのが善玉の数値。悪玉と善玉の比率(LH比)を知って動脈硬化防止を心掛けたい。【小島正美】

 東京都内の男性(58)は健康診断の結果、悪玉のLDLが1デシリットル当たり125ミリグラム、善玉のHDLは同45ミリグラムだった。脂質異常症と診断されるのはLDL値が140以上、HDLが40未満のため、特に異常はない。ところが、たまたま超音波検査(エコー検査)で心臓周辺の血管を調べてもらったところ、鎖骨下の動脈の血管に脂がたまり、血管が狭くなっていることが分かった。

 この男性のケースをどう考えればよいか。生活習慣病予防外来で脂質異常症などの患者を多く診ている武田病院健診センター(京都市)の桝田出(いづる)所長(京都大学医学部臨床教授)は「こういうケースは珍しくない」と日ごろの治療体験から話す。続けて、「悪玉のLDLが正常目安の120未満であっても、HDLが低い場合は心筋梗塞(こうそく)を起こすリスクがけっこう高いので、LDLとHDLの比率であるLH比(LDL÷HDL)を見ることが重要だ」と指摘する。

 HDLは血管に付着した悪玉コレステロールを運び去る働きをする。つまり、HDLが低いと血管に脂がたまりやすくなるわけだ。

   ◇   ◇

 小倉記念病院(北九州市)が06~07年に、急性心筋梗塞や狭心症で運ばれた患者約370人を調べたところ、LDLの平均値は正常範囲内の111ミリグラムだった。さらにLDLが100未満と低く、より正常と思われた患者141人を調べたところ、約3割の人はHDLが40未満と低かった。

 同様の報告はほかにもある。カレスサッポロ北光記念クリニック(札幌市)の佐久間一郎所長らの研究報告によると、心筋梗塞になった北海道内の男性患者571人のうち、313人(約55%)はLDLが120未満と正常範囲だったが、HDLは正常範囲とはいえ低めの40~50程度だった。

 こうした研究結果から、桝田さんは「LDLとHDLの比率が2~2・5以上ある場合は、たとえLDLが正常範囲でも、要注意と考え、念のためにエコー検査で頸(けい)動脈の様子を調べた方がよい」と話す。

 エコー検査をすれば、血管の中に脂がどれくらいたまっているかが分かる。佐久間さんのクリニックでは、健診を受けた人にLH比を最初から見せている。その比率が2~2・5以上の場合には、生活指導や治療を勧めている。佐久間さんは「HDLが正常範囲でも40台の人は要注意だ」とHDLの数値の重要性を話す。

   ◇   ◇

 動脈硬化などに詳しく、LH比を重視した診療を提言している倉林正彦・群馬大学医学系研究科教授は「健康な人では、まずLDLを120以下まで下げ、LH比を2以下にする。糖尿病や高血圧、家族に脂質異常症のある人は、LH比を1・5程度にするのがよい」とアドバイスする。

 医療機関では一般的に、LH比の改善には肝臓でのコレステロールの合成を抑えるスタチン系薬剤が使われる。また、中性脂肪の高い人はコレステロールの腸での吸収を抑える薬剤を組み合わせることもあり、3~4カ月程度の服用で改善するケースが多い。

 薬以外でHDLを上げる方法としては、喫煙をやめて、運動するのが一番効果的だ。東山武田病院(京都市)では患者の体力に応じた運動もアドバイスする。今井優・健康運動指導科長は「1日30分程度歩く運動を続けるだけでも、約2~4カ月でHDLが上がる」と運動の大切さを強調している。

 

※毎日新聞 2010年7月2日 東京朝刊


 ◆夏を中心に年4000人前後感染。下痢や発熱、嘔吐などの症状があり、死亡例も。
 ◇手洗い徹底、生肉避けて
 ◇若年・高齢者は要注意/75度1分の加熱で死滅

 病原性大腸菌O157などの腸管出血性大腸菌感染症が例年を上回るペースで発生している。重症化すれば死亡する恐れもある。患者が増加する夏を前に、同感染症の特徴を知り、感染を予防するための注意点を確認しておきたい。

 国立感染症研究所(感染研)によると、年明けから5月中旬まで毎週10~30人前後と例年より多めの患者発生が続いた。その後さらに増加し、6月7~13日の週は174人、14~20日の週は128人に上った。20日までの全国の累積患者報告数は計920人に達し、同時期で計1031人に上った01年に次いで、過去10年間で2番目に多い発生数となっている。

 国立医薬品食品衛生研究所の山本茂貴食品衛生管理部長によると、腸管出血性大腸菌は30度を超えると増殖力を増すという。山本部長は「6月に入って感染者数が急増したのは気温が上がった影響があるかもしれない。夏を中心に例年4000人前後が感染するので、これからの季節の調理は特に注意してほしい」と話している。

 感染の多くは飲食時に起きる。O157などの大腸菌に汚染された食物などが口に入ることで腸管で感染する。菌は酸への抵抗力が強く、胃酸の中でも生き残り、ふん便を通じて感染拡大する。少数の菌で感染するため2次感染が起きやすいとされる。

 感染後の潜伏期は3~5日。人が発症するために必要な菌の数はわずか50個程度と考えられている。菌は強いベロ毒素を出し、軽度の下痢から激しい腹痛や発熱、嘔吐(おうと)などの症状を引き起こす。

 さらに患者の約1~10%は、発熱の4~10日後に血便などの合併症を起こす「溶血性尿毒症(HUS)」と呼ばれる重い症状となる。HUSを発症した患者のうち3~4人に1人は何らかの中枢神経症状が表れ、致死率は1~5%だ。

 今年6月、三重県の中学高校で生徒、教職員、給食調理従事者計200人近くの集団感染が確認された。昨夏に発生したステーキ店での集団食中毒では、O157に汚染された加工肉が流通し、15都府県で28人が発症した。

 東京大医科学研究所の笹川千尋教授(細菌学)は、特に輸入や流通が増えている加工肉への注意を促している。「O157はもともと牛など偶蹄(ぐうてい)類の腸管に感染する菌。ふん便や解体時に残った菌から感染する可能性がある。菌は肉の表面で増殖するため、肉を細かくして混ぜ合わせた加工肉は、加熱しない限り内部を殺菌できない」と注意を呼びかける。

 特に若年者や高齢者、抵抗力が弱い持病患者は警戒が必要だ。

 感染研感染症情報センターによると、大腸菌は30分に1度分裂して増殖し、一晩で地球の総人口(60億)を超えるほどに増えると言われる。肉や野菜などの常温保存は避け、生肉や加熱が不十分な食肉を食べることを控える。さらに加工、調理を素早くすることが重要だ。O157の場合、75度以上の加熱を1分以上行うことで死滅するとされる。

 2次感染はふん尿から手などに付いた菌が口に入ることで起きることから、手洗いの徹底で予防が可能だ。感染した場合、ベロ毒素を中和したり、解毒する薬はまだなく、抗生剤が中心だ。適切な治療を行うために早期受診を心がけたい。

 HUSの場合、下痢が回復した後に急速に進行する場合がある。腹痛▽元気がない▽尿量が少ない▽頭痛▽眠りたがる▽けいれん▽血尿--などの症状が出てくると要注意だ。1週間は注意して、体調を観察する必要がある。

 

※毎日新聞 2010年7月7日 東京朝刊

 乳酸菌「1073R-1」を含むヨーグルトがマウスや人の試験で免疫力にかかわるナチュラルキラー(NK)細胞を活性化させることが19日、東京都内で開かれたセミナーで報告された。池上秀二・明治乳業食機能科学研究所研究員が研究成果として発表した。

 佐賀県や山形県内の中高年者(59~85歳)142人に同ヨーグルトを8~12週間食べてもらったところ、NK活性が上がり、風邪をひくリスクが低下したという。

 奥村康・順天堂大医学部教授は「免疫力が高まり長寿をめざす食生活にも役立つだろう」と語った。

※毎日新聞 2010年5月20日 大阪朝刊

 乳酸菌「1073R-1」を含むヨーグルトがマウスや人の試験で免疫力にかかわるナチュラルキラー(NK)細胞を活性化させることが19日、東京都内で開かれたセミナーで報告された。池上秀二・明治乳業食機能科学研究所研究員が研究成果として発表した。

 佐賀県や山形県内の中高年者(59~85歳)142人に同ヨーグルトを8~12週間食べてもらったところ、NK活性が上がり、風邪をひくリスクが低下したという。奥村康・順天堂大医学部教授は「免疫力が高まり長寿をめざす食生活にも役立つだろう」と語った。

※毎日新聞 2010年5月19日

 長生きの秘訣(ひけつ)は何か。一つは、がんやウイルスと闘う免疫力の維持といってよいだろう。では、どんなライフスタイルが免疫力を上げるのか。「『まじめ』は長寿を縮める 『不良』長寿のすすめ」(宝島社新書)の著者でもある奥村康・順天堂大医学部特任教授(免疫学)が東京都内のセミナーで講演した。そのアドバイスに耳を傾けてみたい。【小島正美】

 「まじめな人ほど早死にする」が奥村さんの持論だ。まじめ過ぎると自分で何でも抱え込み、手が抜けない。小さなことにくよくよし、気持ちの切り替えができない。やがてストレスがたまり、病気になる。つまり、まじめ過ぎると免疫力が落ちる。

 その良い例がフィンランド症候群だ。1970年代、フィンランド政府は比較的裕福な40~45歳の男性1200人を二つのグループに分け、一方は健康管理をしっかり行い、もう一方は何もしないようにし、どちらが病気が少なくなるかを15年間追跡した。

 健康管理をしっかりするグループは定期的に健康診断を受け、血圧の高い人は降圧剤などで治療した。さらに塩分や砂糖、アルコールの摂取を控え、運動も行った。一方、何もしないグループは好きなものを食べ、飲酒や喫煙も自由にした。

 15年後、意外な結果が出た。なんと健康管理をしっかりと行ったまじめグループの方が死亡率が高く、自殺や心臓病なども多かったのだ。奥村さんは「健康管理にあまりにも神経質になると逆効果。いいかげんにやっている方が免疫力が高まったのではないか」と推測する。

 何事もほどほどに楽しみ、気楽に過ごすのがよい。調査結果は忙しい現代人へのそんな戒めかもしれない。

 ■NK細胞

 免疫力を維持する上で大事なのが、NK(ナチュラルキラー)細胞の働きだ。NK細胞はリンパ球の一種で、体外から侵入したウイルスを撃退したり、がん細胞を殺す働きをする。

 人の体内では1日に約1兆個の細胞が生まれ変わり、そのうち5000個前後が、がん化するなど出来損ないの細胞になる。こうした出来損ないを撃退するのがNK細胞だ。NK細胞の働きが高いと、がんになりにくい。

 奥村さんはこれをマウスの実験で確かめた。NK細胞のないマウスを実験用に作り出し、死ぬまでの経過を見たところ、がんが多発することを確かめることができた。動物実験を裏付けるように、人間でもNK細胞の活性が高いとがんになりにくいとの研究報告もある。

 NK細胞の働きは朝起きてから徐々に高くなり、夜11時を過ぎると低くなる。深夜まで起きて仕事をしていると、活性度合いは落ちる。このため奥村さんは「深夜から朝方まで勤務する昼夜逆転の勤務形態は、NK細胞の活性を低くする」と指摘する。あまりにも厳格な生活は良くないが、かといって昼夜逆転の生活も、健康を損なってしまう。

 また、NK細胞は精神的なストレスに非常に弱い。例えば受験生はテスト前になると活性が下がりやすく、風邪をひきやすくなる。こんな時は、細かいことにくよくよしないこと。友達と会って楽しく話し、気晴らしに好きなものを食べ、よく笑う。そんな過ごし方がいいようだ。

 ■R-1乳酸菌

 食べ物でも、NK細胞の活性を上げるとされるものがある。キノコや納豆、ヨーグルトの乳酸菌などだ。

 明治乳業食機能科学研究所の池上秀二研究員によると、R-1乳酸菌を含むヨーグルトをマウスに与えたところ、NK細胞の活性が高くなった。人を対象とした試験も行われている。山形県舟形町と佐賀県有田町で59~85歳の住民計142人に、同種のヨーグルトを1日90グラム、8~12週間食べてもらい、食べない群と比べた。その結果、ヨーグルトを食べた群は食べる前より風邪をひくリスクが低下したことが分かった。

 さらに、インフルエンザウイルスに感染させたマウスに同種のヨーグルトを食べさせた実験では、ウイルスが減るなど感染リスクを低下させる作用もあった。

 池上さんはこのメカニズムについて「乳酸菌とその菌が作り出す多糖類がリンパ球の一種のT細胞に働き、T細胞が作る生理活性物質(インターフェロンガンマ)を介して、NK細胞が活性化するのではないか」と推測する。

 ヨーグルトには腸の働きを整える以外にも、さまざまな効用があるようだ。

 

※毎日新聞 2010年6月12日 東京朝刊

 東京で勝負しようと大阪から上京したものの仕事に恵まれず体調を崩したという、やないさん。明るく前向きな性格でホームヘルパー2級の資格も持つ。「お年寄りと接するのが大好き」と話す姿が印象的だ。

 --なぜ東京に?

 大学を出て大阪で芸能活動をしていましたが、休みに六本木ヒルズに遊びに行き、あまりの人の多さにびっくりしたんです。ああ、みんなここで戦っているんだ、私ももっと挑戦しなければという気持ちになって。テレビのレギュラー番組もあるのに、東京で勝負しようと。23歳の秋でした。

 --つてはあったのですか。

 全然ありません。本業だけでは生活できないので、飲食店のバイトやティッシュ配りもしました。食事はもっぱら安いお弁当。おなかを膨らまそうとパンを水で流し込んだり。1年近くそんな生活をしていたら急性胃腸炎になり、体に湿疹(しっしん)も。大変でした。

 --食生活を改めた?

 はい。食の大切さを痛感したので、今はできるだけ自炊をしています。凝ったものは作れないのですが、野菜炒めをチャッチャと作ったり。カボチャや肉ジャガなど煮物系も多いですね。母に電話して作り方を教えてもらったりしています。

 --体を動かすのは?

 表現力を磨きたくて日舞と社交ダンスを習っています。日舞は足を曲げて低い姿勢で動くので、筋肉を使います。じわじわと汗が出て、見た目以上に体が鍛えられます。同じ踊りでも社交ダンスは表現方法が全く違う。そこを楽しんでいます。

 --オカリナも吹くそうですね。

 1年ほど前から教室に通っています。年配の方が多く、昔話を聞いたりするうちに気持ちが落ち着くのが分かります。背伸びしなくてすむのがいい。人の温かさを感じ、全く違う世界の人たちに刺激をもらっています。

 

※毎日新聞 2010年6月12日 東京朝刊

卵の卵白たんぱく質が内臓脂肪量の蓄積を抑えることがラットによる実験で分かった。キューピーが5月、日本栄養・食糧学会で発表した。

 ラット24匹を4グループに分け、それぞれに(1)卵白たんぱく質20%とコーン油5%(2)卵白たんぱく質20%とコーン油10%(3)カゼイン(牛乳に多く含まれるたんぱく質の一種)20%とコーン油5%(4)カゼイン20%とコーン油10%--のえさを4週間与えた。

 その結果、卵白たんぱく質を食べたグループはカゼインに比べて内臓脂肪量の蓄積が抑えられた。また、肝臓での脂肪燃焼にかかわる酵素の働きを見ると、卵白たんぱく質を食べたグループのほうが酵素の活性が上がっていることが分かった。肝臓で脂肪燃焼が増えたことが内臓脂肪量を低下させたようだ。

 今回の実験結果は、生活習慣病の予防に卵白たんぱく質を活用できる可能性を示唆している。

 

※毎日新聞 2010年6月12日

木の堅さや繊維の方向など木質を左右するたんぱく質を、福田裕穂(ひろお)・東京大教授(植物生理学)の研究チームが特定した。このたんぱく質の働きを制御することで、プラスチックのように幅広い用途に利用できる樹木の開発につながる可能性があり、脱石油時代への備えになりそうだ。米生物学誌カレント・バイオロジー(電子版)に発表した。

 植物特有の「木質細胞」の細胞壁には、ところどころ壁が薄くなっている部分(壁孔(へきこう))がある。水や養分が行き来する「窓」の役割を果たし、その配置や数は木質を決める重要な要素になっている。しかし、こうした構造がどのようにして作られているのかは謎だった。

 研究チームは、植物の実験でよく利用されるシロイヌナズナを使い、木質細胞を作る手法を開発し、細胞が生きた状態で壁孔が作られる過程を調べた。

 その結果、どの木質細胞でも、「MIDD1」と呼ばれるたんぱく質が働いている場所で壁孔が作られていることを発見。また、MIDD1は細胞壁を構成する炭水化物「セルロース」を集積させないことで壁孔が作られることも突き止めた。たんぱく質がないと壁孔はできなかった。

 福田教授は「木を石油に代わる素材として利用できるようになるかもしれない」と期待する。

 

※毎日新聞 2010年6月20日

高齢女性に多い骨粗鬆(こつそしょう)症を引き起こすたんぱく質が、血管を硬くする「石灰化」も引き起こしていることが大阪大大学院の森下竜一教授(老年医学)らの研究で分かった。この物質の働きを薬などによって抑えれば、心筋梗塞(こうそく)などの危険が増す動脈硬化の予防が期待できるという。

 2日、米心臓病学会発行のサーキュレーション・リサーチに掲載された。骨粗鬆症の要因となる破骨細胞の増加は、たんぱく質の一種、RANKLが活性化することが原因とされ、女性ホルモンが減少するとRANKLが活性化することが知られている。この物質の働きを抑える骨粗鬆症治療薬は現在治験中で、森下教授は「血管への効果も期待できる」と話している。

 森下教授らは、骨粗鬆症患者の多くに血管が石灰化する現象が見られ、血管細胞からRANKLが見つかることに着目。ヒトの血管の平滑筋細胞をシャーレで培養し、RANKLを加えたところ、石灰化が起こった。一方、遺伝子を改変して人工的に動脈硬化にしたマウスに女性ホルモンを与えたところ、石灰化は抑制されRANKLが石灰化にかかわっていることが確認できたという。

 

※毎日新聞 2010年7月2日 大阪朝刊

高齢女性に多い骨粗鬆(こつそしょう)症を引き起こすたんぱく質が、血管を硬くする「石灰化」も引き起こしていることが大阪大大学院の森下竜一教授(老年医学)らの研究で分かった。この物質の働きを薬などによって抑えれば、心筋梗塞(こうそく)などの危険が増す動脈硬化の予防が期待できるという。

 2日、米心臓病学会発行のサーキュレーション・リサーチに掲載された。骨粗鬆症の要因となる破骨細胞の増加は、たんぱく質の一種、RANKLが活性化することが原因とされ、女性ホルモンが減少するとRANKLが活性化することが知られている。この物質の働きを抑える骨粗鬆症治療薬は現在治験中で、森下教授は「血管への効果も期待できる」と話している。

 

※毎日新聞 2010年7月2日

食生活が野菜などに偏って肉類をあまり食べない高齢者が、寝たきりにつながる転倒骨折をする危険は、そうでない人に比べて3倍近く高くなるとの調査結果を、東北大の研究チームがまとめた。

 調査は02~06年、仙台市に住む70歳以上の男女877人を対象に実施。それぞれ「野菜食」「肉食」などの食事パターンを把握した上で、骨折の有無などを継続調査した。

 調査に当たった岩崎鋼准教授(漢方内科)によると、4年間に交通事故などを除く転倒骨折をしたのは877人中28人。食生活と骨折の関連性を解析したところ、野菜を毎日のように頻繁に食べるが肉類はほとんど食べない「野菜食」の人の骨折リスクは、そうでない人に比べ2・7倍高かった。

 同様に、2日に1回程度は肉類を食べる「肉食」に当てはまる人の骨折リスクは、肉をあまり食べない人よりも2・8倍低かった。

 欧米では肉食中心の食生活は骨密度を下げるとする調査が多いといい、岩崎准教授は「意外な結論だが、欧米に比べて日本の高齢者は肉類の摂取量が少ないためかもしれない。野菜に偏りがちな人は、意識的に肉類を食べるようにしたほうが望ましい」としている。

 

※毎日新聞 2010年7月9日 東京朝刊

ランピットのエントランス
ランピットのエントランス

 毎日新聞社とKDDIは7日、ランナー向けシャワー施設「Run Pit by au Smart Sports」を協業で設立し、関係者に披露した。毎日新聞東京本社の入るパレスサイドビル1階皇居側で、地下鉄東西線竹橋駅に直結した絶好の立地と利便性をランナーにアピールしていく。サービス開始は今月10日から。

 「Run Pit(ラン ピット)」は、シャワー15基(男子7基、女子8基)とロッカー(男子60個、女子62個)のほか、契約シューズロッカー(男女とも各99個)も備えている。女性用にパウダールームも設置し、クレンジングやシャンプーなどアメニティーも各種完備、仕事帰りの女性が気軽に利用できるよう設備を充実させた。

 またKDDIでは、同社が提供するランニングやウオーキングのサポートサービス「au Smart Sports Run&Walk」のアプリケーションを使って、皇居を走った距離を施設内で確認したり、距離に応じてポイントをためるなど、au携帯電話と連動したサービスを展開。同機能付き携帯電話の貸し出しもする。また8月末までの土日には、女性を対象にした夏限定サービスとして「ランニングしても落ちない」メークサロンも開く。

 オープンにあたり、観堂義憲・毎日新聞東京本社代表は「びわ湖毎日マラソンや別府大分毎日マラソンなど、毎日新聞社はランニング事業にも力を入れている。利用者の健康増進に一役買うとともに、ラン ピットからも日本を代表する選手が出てきてほしい」と語った。また高橋誠・KDDI代表取締役は、「『au Smart Sports』の累計会員数が7月5日に200万人を突破し、携帯電話のスポーツ・健康系サイトでは日本最大級の会員基盤を持つことになった。今後はランピットなどの施設や競技大会を通じて、auの携帯電話会員とリアルに接する場を作っていきたい」と抱負を述べた

 

※毎日新聞 2010/7/7

 ◇毎日新聞闘病記「骨肉腫と闘う」に多くの手紙が

 本紙に連載した闘病記「骨肉腫と闘う」(昨年7月~今年3月)に、読者から何通もの便りをいただいた。9月の退院、10月の職場復帰後も、抗がん剤の副作用で肝臓や腎臓の機能や血液の製造能力がなかなか回復せず、仕事もままならなかった。手紙が届き始めたのはそんな時だった。どれも、自身や身内の大病経験や苦労話を記し、私へのいたわりの言葉があった。がん体験者からの手紙もあった。感謝の気持ちを込めて、手紙を2回に分けて紹介したい。

 2月3日、夕刊社会面の「憂楽帳」に「お礼参り登山」と題して書いた。大阪、奈良府県境の金剛山に1月、ロープウエーで上がり、つえをついて山頂に立った話だ。すると、2通が届いた。

 1通は岸和田市の武田環さん(78)からで「もう仕事ができるようになられたのだと、ほっとしました」。このころの掲載中の闘病記では、私はまだ化学療法の真っ最中。武田さんは憂楽帳を読むまでは、私が入院中だと思われていたようだ。長男が44歳の私と同じ年齢で、「我が子のことのように思えて」と感想をもらった。

 もう1通は東大阪市の稲井道子さん(61)。40代で乳がんになり、精神的に追いつめられただけに、私の回復具合が「本当にうれしく、あーあー良かったと思いました」。

 闘病記30回目「『憶病になれ』恩師の言葉胸に退院」が3月16日に掲載されると、池田市の鹿野又(かのまた)鈴子さん(75)から手紙が来た。母と兄をがんで亡くされており、「恩師の方の言われるように、そっとゆっくりと頑張って」とあった。

 闘病記連載終了(同30日)の直後には、豊中市の小嶋順子さん(66)から届いた。夫が02年に脳出血に。一時は記憶も失ったが、今では文字が書けるまで回復したという。文面の「頑張って!負けるな!と、いつも届かない声援を送ってきました」の言葉が聞こえてくるようだった。

 豊中市の細川晴子さん(63)にも「自分の子どものように心配」していただき、「涙なしでは読むことができませんでした」と記されていた。

 私は体もかなり回復し、今月から通常勤務に戻った。2カ月に1度、再発チェックのため通院する。雑踏ではつえをついているが、屋内では二本足だけで歩ける筋力もついた。

 今、手紙を読み直し、病や苦労を経験すると人は優しくなれるのだと痛感する。だから、面識もない私に温かい言葉をかけてくださるのだろう。励ましの手紙のほか、「記事に元気づけられた」という便りもあった。最近、がんを宣告された方や、身内をがんで亡くした方たちからだった。

 

※毎日新聞 2010年5月11日 地方版

 ◇闘病体験、今後の取材に生かしたい

 闘病記「骨肉腫と闘う」を連載中、最初に届いた手紙は、当時教師だった柏原市の伊藤恵子さん(60)からだった。「膵臓腫瘍(すいぞうしゅよう)の疑いと宣告されたばかり」と記されていた。

 手紙をいただいたのは、今年1月20日、同僚記者が朝刊プラスα面のコラムに私が昨秋に職場復帰したことを紹介して間もなくのこと。「よかった! 復帰されているんだ!」の後に、ご自身は医師から「合併症の心配はあるが、手術がベスト」と説明を受けた一方、教職39年目となる今年の3月で退職するとも。人生の大きな節目の時期に揺れる心境がつづられていた。

 私も返信を出し、4月初めに3通目が届いた。手術でがんを摘出し、転移はなし。3月30日に退院し、翌日の退職の辞令は職場でもらうことができたとのことだった。

 伊藤さんに電話してみた。約25年前、同僚を膵臓がんで亡くしただけに今回はショックだったが、入院したことで家族や友人とのきずなが深まったそうだ。私には、「復帰、おめでとうございます」と改めて言葉をかけてくれた。

 4月中旬、大阪市の東由起子さん(49)から「父もがんと闘っていましたが、2月に他界いたしました」と手紙が来た。次第に衰えていきながらも治ると信じていたといい、「苦しみから解放されてよかったと心から思えるくらい、父なりに病に向き合い、縁の薄かった私との時間をつくってくれました」。

 また、「病気に潔く向き合う佐々木さんの姿勢が、父の病を受け入れられる唯一の救いの手だてでした」「頑張ってこられたから、これからはゆっくり一つずつ。あまり頑張りすぎないで」と私への心遣いもあった。

 4月下旬には、小児がんの手術を2度、経験している小学生の息子を持つ母親からメールが届いた。最初の手術の時、お母さん友達に「あかんらしい」とうわさされて傷つき、それ以来、本当に仲のよい人にしか話していないのだという。

 「がん=死や、同情の目で見られることに耐えられません」「現実を背負っていくのは重たすぎます。どこかで向き合わないといけないとは思いますが」--。悩む心の内をつづり、「ですからこそ、あなたが連載されたことに感動しました。記事で道を示していただいたように思います」と書かれていた。

 私も再発のリスクを抱える。だが、医学は進歩する。がん=死ではないことを、多くの人に知ってほしい。

 私は今年、記者21年目。これまで自分の記事に、これほど温かく真剣な便りをもらったことはない。幸せに思う。今後は、がん体験者になったからこそ得られた視点を、取材活動に生かしていきたい。

 

※毎日新聞 2010年5月18日 地方版

 ◇手術で幸運にも乳房温存

 がん患者に医療情報を提供するNPO法人「キャンサーネットジャパン」大阪事務局(大阪市淀川区)は、若い乳がん患者を対象に「おしゃべり会」を開いている。同じ世代同士で悩みを話し、心の負担を軽くしようという試みだ。コーディネーターは事務局スタッフの橋本真由美さん(43)。橋本さんも乳がん体験者。自分で胸にしこりを見つけながら、8カ月間、医師の診察をずるずると後回しにしていた。

 自分で胸を触る自己検診は年2、3回だった。たまたま触った右の乳房にしこりを感じたのは04年1月のこと。「乳がんでは」と不安が頭をよぎったが、派遣の仕事が決まったばかり。がんを告げられる怖さもあり、病院に行かなかった。

 2月、しこりのすぐ上が膨れ始めた。水がたまる「のう胞」。6月には直径約10センチになった。それでも、間近に迫ったドイツ旅行を優先。旅先で妻の異変に気づいた夫の信吾さん(47)は「悪いものだったら、どうするんだ」。その後も信吾さんから病院での検査を勧められたが、9月にも米国旅行があり、そのままにし続けた。

 病院に向かったのは9月末。数日後、医師から告知があった。「乳がんです」。頭が真っ白になった。乳房を残せるのかも気になった。「取ってしまってから、再建を」と医師。でも、乳房が一つしかない姿は想像できなかった。

 帰宅後、約2時間は放心状態だった。我に返り、仕事中の信吾さんに電話した。「そうやったんか」。いつもは感情をあまり表に出さない夫の声が沈んでいた。気を取り直し、本やインターネットで情報を探し始めた。

 セカンドオピニオンを受けた病院に12月に入院した。のう胞は当時、直径約14センチにも。手術前、乳房の中身を全部切除すると説明を受けた。ところが、麻酔から覚めると、乳房の形はほとんど変わらない。摘出部分が小さかったためだった。

 ただ、がん細胞が周囲の組織を壊しながら広がっていく「浸潤」が起きていた。転移の可能性が出てきたのだ。しかし、がんの特性から、「他の補助治療を受けても生存率には差がない」と告げられた。手術のほかの治療はなかった。

 医師の説明は「再発リスクは、手術後3年間が高く、10年でかなり低くなる」。もっと早く受診していれば、浸潤は起きなかったかもしれない。それでも、前向きに考えることにした。がんは軽度であり、治療もそんなに苦しまなかった。乳房を残せたのはラッキーだったのだ。

 退院後、仕事は05年2月から再開したが、やりがいを感じない。やがて、がん体験を生かしたいと考え始めた

 

※毎日新聞 2010年5月25日 地方版

 ◇「おしゃべり」通じ、さまざまアドバイス

 05年2月に仕事を再開した橋本真由美さん(43)。しだいに、「乳がん体験を生かした活動をしたい」との思いが強くなってきた。自分に何ができるのか。がんを告知されたころを振り返ってみた。

 告知直後にインターネットで乳がんの情報を求めたが、情報ははんらんしていた。どれを信じていいのか分からない。腹も立った。平凡に暮らしてきただけなのに、なぜこんな目に......。揺れる胸の内を友人たちに話すと、涙を浮かべ、黙って聞いてくれた。不安や迷いが晴れてきた。

 「今の自分なら、乳がん患者の悩みを受け止められるのでは」。そんな時、NPO法人「キャンサーネットジャパン」(東京都文京区)の「乳がん体験者コーディネーター養成講座」を知った。

 キャンサーネットジャパンは、医療セミナーを各地で開くなどして、がん患者に情報を提供している。橋本さんは08年、養成講座を受講して資格を取得。キャンサーネットジャパンが大阪市淀川区に大阪事務局を開いた昨年5月、スタッフになった。

 大阪事務局では現在、前立腺がんや精巣腫瘍(しゅよう)、乳がんの相談会、医療用かつらのレンタルサービス、患者へのマッサージを行っている。橋本さんの担当は、若い乳がん患者を対象にした「おしゃべり会」だ。

 これまで相談に訪れた患者の中には、医師不信に陥っていた女性もいた。掛かり付けの医師にずっと「良性」と言われていたのに、実際には悪性だった。別の病院に行きたいが、医療自体に信用を失ってしまった。でも、がんを放置しておくわけにはいかない--。

 橋本さんはじっと話を聞き、乳腺専門医のいる病院を選ぶようアドバイスした。最新の治療法を科学的根拠とともに説明した。

 橋本さんは今も、体調がすぐれないと、「転移かも」と心配になる。それでも、がんになったことも人生の一部だと納得できるようになった。がんを通して、多くの人との交流が生まれたからだ。「乳がんになって自分を否定しそうになったら、話をしに来てほしい。悩みや不安を口に出せば、きっと何か解決の糸口が見つかる」

    ◇

 キャンサーネットジャパンは今月12日午後1時半、大阪市天王寺区上本町8の大阪国際交流センターで「がんを知ろうセミナーin大阪」を開催。インターネットでの情報収集方法の紹介や、女性のがん、男性のがんについてのトークセッションがある。橋本さんはトークセッションで話をする。参加費1000円。事前申し込み必要。このセミナーやおしゃべり会の参加予約は大阪事務局(06・6886・3388)

 

※毎日新聞 2010年6月1日 地方版

 ◇思わぬ診断、移植に向けバンク登録

 3月の夜。府立健康科学センター(大阪市東成区)に集まった観客約40人の拍手を聞きながら、杉本郁夫さん(35)=大阪市東成区=は10年前に交わした約束を思い返していた。この日は、白血病への理解を求めて杉本さんが企画したチャリティー演劇「月の静かな夜のこと」の初演。拍手がやみ、あいさつに立った。「僕は助けてもらいました。でも2000人以上が骨髄移植を待っています」。もう約束を果たすことのできない悔しさが杉本さんの瞳を潤ませた。

    ◇

 あと1回だけ手術を受ければ、病院と無縁の生活に戻れるはずだった。

 96年、建設中のマンション5階から転落し、40日間も意識不明に。手術を繰り返して体を動かせるようになり、残すは左ひざの治療だけだった。ところが99年4月、手術に備えて血液検査を受けると、白血球の数が通常の5・5倍あると判明。血液のがん「慢性骨髄性白血病(CML)」だった。

 CMLは、骨髄で白血球や赤血球をつくる「造血幹細胞」ががん化し、異常に増え続ける病気。症状が急変する「急性転化期」に入るまで進行は緩やかだが、治療しなければ死亡する。日本では毎年約600人が発症し、約8000人の患者がいるとみられる。

 白血病の知識はなかったが、治療が難しいことは予想できた。「2年かかるか、3年か、それどころか治るのかと......。泣いたらあかんと思ったらまっすぐ帰れず、落ち着くまで家の近くに車を止めてしばらく一人で過ごしました」と杉本さん。

 根本的に治すには骨髄移植が必要と告げられた。白血球の型が一致する健康なドナーから骨髄液を提供してもらい、血液を正常につくれるようにする治療だ。家族全員調べたが誰も適合せず、骨髄バンクに登録した。家族以外で一致する確率は数百~数万人に1人だ。

 「ドナーが見つかるか心配しても仕方ないから、どう生きたいかだけ考える」と決めた。インターフェロンによる治療で進行を抑えられることが分かり、投薬しながら解体のアルバイトを始めた。建設の仕事に復帰するつもりだった。「もう行けなくなるかも」と覚悟して、友人とハワイ旅行も企画した。

 朗報が届いたのは、同年のクリスマス直前。ハワイから帰国し関西国際空港から自宅に電話を入れると、ドナーが見つかったと知らされた。「これで助かる」。転落事故以来、心配をかけ通しだった両親に孝行できるのもうれしかった。

 ドナーの予定に合わせ、移植を受けるのは翌年6月と決まった。

 

※毎日新聞 2010年6月8日 地方版

 ◇同じ病棟の2女性の死にがく然--もっとドナーが

 血液のがん「慢性骨髄性白血病(CML)」になった大阪市東成区の杉本郁夫さん(35)。病状が進行する前に骨髄を提供してくれるドナーが見つかり、すべて解決したような気でいた。しかし、移植を受けるため入院した府立成人病センター(大阪市東成区)で、闘病のつらさや不条理を実感することになった。

    ◇

 2000年5月、杉本さんは移植に向けた準備のため入院した。拒否反応を防ぐため、事前に放射線照射や抗がん剤投与を受けて自分の骨髄をなくさなければいけないのだ。

 放射線を浴びると子どもができなくなる可能性があるため、照射を始める前日に精子を保存した。「男としての仕事がでけへんようでショックでしたが、準備もすべて完了し、あとは助かるだけと思っていました」と振り返る。白血球がなくなり抵抗力が落ちている間の感染を防ぐため無菌室に入り、6月2日に骨髄移植を受けた。

 ところが、移植が成功すれば増えるはずの白血球が増えない。一方、抗がん剤の副作用などで口や食道の粘膜に炎症ができた。それなのに、朝、昼、晩と数十粒もの薬を飲み下さなければならない。痛みと吐き気で眠ることもできなかった。

 1週間たち、母仁子(まさこ)さん(60)は医師に呼ばれ、移植が失敗した可能性があると伝えられた。杉本さんも無菌室の窓越しに「もう無理かも。限界」と訴えた。仁子さんが聞いた初めての弱音。励ます言葉が見当たらなかった。

 しかし翌日、白血球が一気に増え始めた。じきに炎症も引き、かゆ、そして米粒を食べられるように。抵抗力もつき大部屋に戻った。いったん上り調子になると回復は早く、10月には退院することができた。

 病棟には同じCMLの20代患者が2人いた。2人とも女性で以前から入退院を繰り返していた。病院食に飽きた若者3人で集まっては食べ物の話ばかりしていた。「退院したら一緒に焼き肉を食べに行こう」「すしも食べたい」と約束した。しかし、移植を受けられたのは杉本さんだけ。症状が急変する「急性転化期」に既に入っていた2人は、杉本さんの退院から半年内に相次いで他界した。家族から連絡を受け、一人だけ生き残ったことを知りがく然とした。「もっとドナーが増えたらいいのに」。骨髄バンクへの協力を求める杉本さんの活動の原点だ。

 

※毎日新聞 2010年6月15日 地方版

 ◇イベント会社設立、当事者として発信

 血液のがん「慢性骨髄性白血病(CML)」の治療で骨髄移植を受け、新たな人生を授かった大阪市東成区の杉本郁夫さん(35)。治療の副作用や病への無理解と闘いながら07年1月、チャリティーコンサート「いのちを紡ぐ」を初めて開催した。コンサートは定着し、今夏、4回目を迎える。

   ◇

 杉本さんは退院後、非常勤職員として府立健康科学センター(大阪市東成区)に就職。センターで無料セッションを開いていた歌手グループ「土曜の午後はシャンソンで!」と親しくなり、闘病の苦労や移植の重要性を知ってもらった。無料セッションは骨髄バンク支援のために開かれるようになり、07年、収益金をすべてバンク支援団体に寄付するチャリティーコンサートに発展した。

 今年3月には、闘病体験を基にした演劇「月の静かな夜のこと」を企画した。劇は白血病を告知された会社員と家族のきずなを描写し、公演後「骨髄バンクのことを勉強したい」「当事者の苦労を痛感した」などの感想が寄せられた。

 社会復帰には壁もあった。センターで働く前、ある会社の就職面接で病歴を明かした途端、「障害はいいけど、白血病は......」と、採用を断られたのだ。

 「死の病」と思われていることもあり、がん患者の就職への理解はまだ十分でない。07年施行の「がん対策基本法」も、患者の就労について触れていない。

 杉本さんは05年に独立し、市内にイベント会社を設立。今は小さな所帯だが、「日の出」を意味する英語「sunrise(サンライズ)」から決めた社名「ライズ企画」には、患者や元患者を雇って再出発の機会を提供する願いが込められている。

 抗がん剤などの副作用で腎機能が悪化し、週3回、透析が必要になった。服薬も続く。それでも突き進むのは、「助けてくれる人がいたからイベントや起業を実現できた。当事者として発信するのがドナーや支援者、亡くなった患者仲間の期待に応えること」と思うから。入院患者も参加できるイベント開催も目指している。【林田七恵】
 ◇骨髄バンクチャリティーコンサート、8月21日大東市で

 第4回骨髄バンク支援シャンソンコンサート「いのちを紡ぐ」は8月21日午後2時、大東市新町の市立総合文化センターで。前売り2500円。問い合わせは「骨髄バンクチャリティコンサート実行委員会」事務局(06・6976・8867)。

 

※毎日新聞 2010年6月22日 地方版

 ◇病院を休職、退職し阪大大学院で学ぶ--患者に寄り添う最適なケア求め

 看護師としてがん患者をケアする中で「今の自分では何かが足りない」と感じ、日本看護協会の認定資格「がん看護専門看護師」(OCNS)を取得すべく大学院で勉強する人たちがいる。大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻「OCNSコース」(7人、吹田市)を紹介する。

    ◇

 大阪市内の総合病院の呼吸器内科で5年間働き退職した1年、安田千香さん(28)=豊中市=の学ぶきっかけの一つは、2年前のある肺がん患者だった。

 40代のその男性は、病状が悪化して息が荒くなっても「酸素吸入は死への第一歩。できるだけ頑張りたい」と酸素マスクを拒んだ。安田さんは「楽になりますよ」と勧めたが男性は固辞。安田さんは看護師として、患者の生き方を尊重したい思いと、苦しさを和らげたいという思いがぶつかり、どのように患者とかかわるべきか見えなくなった。男性は、結局意識が無くなるまで酸素マスクを着けずに亡くなった。

 今でも何が最善の判断だったかは分からない。ただ安田さんは「マスクを拒んだ患者さんの死への恐怖を理解し、本当に患者さんに必要で最適なケアを提供することができなかったのでは」と思う。「それを考え抜くことでもっと患者さんの理解を深めたい」

    ◇

 近畿大学医学部奈良病院(奈良県生駒市)を休職した、1年の市村紀子さん(36)=大阪市=は、泌尿器科、血液内科、腫瘍(しゅよう)内科などを経験し、院内の緩和ケアチームにも参加。休職前は約30人の看護師を束ねる「師長」だった。管理職のやりがいを感じつつも、現在の最善の治療を提供されている患者さんとその家族の苦しみ・不安を和らげられないことに悩んだ。同じように悩む看護師のためにも、がん、副作用の強い治療、患者、医療者の関係を見つめ直し、「人生の岐路に立つ患者さんに自信を持って寄り添う手がかりをつかみたい」と進学を決めた。

 市村さん自身、3年前に腫瘍ができて倒れた。「がんかもしれない」という恐怖。幸い腫瘍は良性で手術は成功し、現場に復帰すると、ある40代前半の男性がん患者が「良かったなあ」と自分のことのように喜んでくれた。ケアする立場だったはずが、実は患者に支えられ、教えられ、与えられる。看護という仕事の喜びはここにあると感じた。

 市村さんは「将来は医療チームの有志を募り、自宅であれ病院であれ患者さんが望む最期を迎えられる環境作りをしたい」と勉強に励む。

 

※毎日新聞 2010年6月29日 地方版

 ◇全国で193人、広がり不十分 医師・薬剤師含め、プロ目指し5大学連携

 がん患者のためにできることは何か--。看護師の仕事を休職、退職し日本看護協会の認定資格「がん看護専門看護師」(OCNS)を目指す大阪大学大学院「OCNSコース」(吹田市)の1、2年生7人。同協会はOCNSを「がん患者の身体的・精神的な苦痛を理解し、患者やその家族に対してQOL(生活の質)の視点に立った水準の高い看護を提供する」と定義。実際のOCNSは、仲間の看護師にがんの知識や対応を教育▽医師には話しにくい患者の相談に乗る▽がん特有の対応困難な苦痛症状をケアする▽倫理的葛藤(かっとう)について関係者間で調整--といった場面で活躍しているという。

 ただ、実際のOCNSは全国で193人、府内で16人(共に6月1日現在)。日本看護協会は「広がってきたが、まだ十分とは言えない。がん診療連携拠点病院には100%いることを目指したい」としている。

 大阪大学では、OCNS不足、緩和医療などの専門医不足、一般臨床医の知識不足などを解決しようと、兵庫県立大▽和歌山県立医科大▽奈良県立医科大▽京都府立医科大と連携し、08年に「がんプロフェッショナル養成プラン」(がんプロ)を開始。OCNSコースの他、医師や薬剤師ら向けのコースがあり、座学や病院実習で各分野の「がん医療のプロ」を目指す。

 大阪大学OCNSコースの大石ふみ子特任教授(44)と葉山有香特任講師(33)は授業とは別に、学生を患者会の活動に積極的に参加させている。「資格は始まりに過ぎない。学生には一人の人間として患者さんと接し、『その人らしい生き方』や『日常生活』に学び謙虚になってほしい」と考えるからだ。

    ◇

 学生を取り巻く環境は厳しい。近畿大学医学部奈良病院(奈良県生駒市)などは経済的支援制度を設置して進学者をサポートするが、同様の制度が無い病院も少なくない。

 またOCNSは業務独占資格ではない。学生には「資格の価値を病院がどう考えてくれるのか」、「がん患者だけを専門にケアできるのか」などと職場復帰後の不安もある。兵庫県立大学看護学部の内布敦子教授は「見える形で実績を重ね、ポジションを勝ち取ってほしい」と話す。

 5大学のがんプロ責任者で大阪大学大学院医学系研究科の松浦成昭教授(58)は「一番患者に近い看護師がさまざまな職種がいる医療現場の『接着剤』になり、チーム医療をうまく機能させてほしい」と期待する。

 

※毎日新聞 2010年7月6日 地方版

東京都内の男性会社員(44)は、週2~3回のペースで、自宅近くの公園を走っていた。目標はフルマラソン完走だが、最近、右足のアキレス腱(けん)に痛みを感じた。我慢していたら痛みが悪化し、ついに左足も痛み始め、走るペースを落とした。男性は「学生のころから体には自信があったのに」と肩を落とす。

 健康ブームも手伝って、ジョギングをする中高年が増えている。フルマラソン参加を目指すランナーもいる。だが最近、この男性のように、アキレス腱に痛みを訴えるランナーが少なくない。

   ◇   ◇

 そもそもアキレス腱は、ふくらはぎの筋肉を、かかとの骨(踵骨(しょうこつ))につなげるための組織。地面をけったり、かかとを引き上げたりするなど重要な役割がある。ふくらはぎの太い筋肉の力をかかとの骨に伝えるため、一番太い場所で人さし指ほどあり、人体の腱の中で最も強いと言われる。

 中高年ランナーが起こしやすいアキレス腱のけがは何か。早稲田大の鳥居俊(すぐる)准教授(スポーツ整形外科)は「アキレス腱周囲炎とアキレス腱付着部炎が多い」と指摘する。

 アキレス腱周囲炎はアキレス腱と、その周囲を包む組織との間に摩擦が生じて起こる炎症だ。また、アキレス腱付着部炎は、アキレス腱とかかとの骨との間で起こる摩擦で生じる炎症で、かかとの骨が元々外側に向けて出っ張っている人の場合なりやすい。

 これらのけがを引き起こしやすくする原因に、足の動きがある。一般的にジョギング時に人間の足は、まずかかとの外側から着地し、次に足の裏全体で地面を踏んで、最後につま先でけるが、人によって癖がある。鳥居准教授は「こうした一連の動きの中で無駄な動きが増えると、摩擦も大きくなり、けがを起こしやすくする」と指摘する。

 また、アキレス腱そのものが損傷する「アキレス腱炎」もある。アキレス腱は、ロープのように、たくさんの細い腱が束になってできている。大きな力が繰り返しかかると、弱っている部分が切れて炎症を引き起こす。競技をしている若い人に多くみられるが、腱が劣化している中高年にも起きやすく、注意が必要だ。

 アキレス腱周囲炎とアキレス腱炎はアキレス腱の上部で、アキレス腱付着部炎は下部で起きやすいため、痛みの場所によってある程度、けがの種類が何か判別できる。

   ◇   ◇

 これらのけがの予防法はあるのか。鳥居准教授は「自分の走りの特徴にあったシューズ選びが重要」と指摘する。アキレス腱周囲炎は、土踏まずを持ち上げる中敷きを靴底に入れることで、本人の癖など足の無駄な動きが大きくなるのを防ぎ、炎症を起こしにくくする。また、かかとを持ち上げる中敷きを入れると、アキレス腱付着部炎になりにくいという。鳥居准教授は「ストレッチをしっかりして、ふくらはぎの筋肉をほぐしておくことも大切」と話す。

 また、日本靴医学会理事長の井口傑(いのくちすぐる)・元慶応大教授(整形外科)は、ジョギングでは年齢に応じた無理のないペースを守ることを勧める。

 井口元教授によれば、人間の平均寿命は明治初期まで40歳くらい。栄養状態の改善などで急激に寿命が延びたが、それに合わせて人間の足が急に進化したということはない。腱は筋肉に比べて血行が少なく、損傷しても補修が利きにくい。つまり、40~50歳を過ぎると、腱は言わば賞味期限が切れたような状態にあるため、無理をすればアキレス腱炎になりやすいという。

 井口元教授は「中高年になったら、(腱を)節約しながら大切に使うという認識が重要。もし痛みが走ったら決して無理をせず、休むことが大切だ」と指摘する。痛みが取れた後の再開は「まず半分程度のペースに落とし、3週間で1割ずつペースを増やす。再び痛みが出たところから1割ほど減らした辺りが、その人の最適なポイント」と助言する

 

※毎日新聞 2010年4月16日 東京朝刊

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早期の血糖管理、死亡率低下に効果

 糖尿病の患者数は、予備群を含め国内で2210万人いると推定され、増加傾向が止まらない。糖尿病治療で最も重要なのは血糖値を低く抑えることだが、食事制限など厳しい体調管理が求められ、実現は容易ではない。しかし最近の研究で、治療当初に薬や徹底した生活習慣の改善によって血糖値をかなり低く抑える努力をした人は、後々の死亡率や心筋梗塞(こうそく)などの発症確率が低くなるとの成果が相次いでいる。「最初の頑張り」が後々生かされることから名付けられた「遺産効果」が注目されている。【永山悦子】
 ◇血管傷つける状態、持続させない

 夜中に何度もトイレに起き、のどが渇く。体重も10キロ近く減った。昨年夏、千葉県に住む会社員の男性(60)は、心配になって病院を訪ねた。

 すると、過去1~2カ月の血糖状態を表すヘモグロビンA1c(HbA1c)が9・6%(正常値は4・3~5・8%)もあった。「糖尿病ですね、すぐ入院しましょう」。そう医師に告げられた。

 入院中、「高血糖は血管を傷つけ、心筋梗塞などによる急死につながる」「合併症で目が見えなくなるかもしれない」など、糖尿病の怖さを学んだ。「自分の体調を管理できずに死ぬわけにはいかない」と、インスリン注射を始めた。狭心症の予防薬など6種類の薬も欠かさない。好きだった酒もやめた。最近のHbA1cは4%台後半から5%台前半と、きわめて良好だ。合併症も出ていない。

 男性は「良い血糖値は励みになる。将来のためにも頑張りたい」と話す。

   ◇  ◇

 血糖値を投薬などによって厳格に低く抑える治療法を「強化療法」と呼ぶ。強化療法をした集団は、しない集団と比べ、網膜症など合併症の発症率が低く、その効果が長く続くことは知られていた。

 北米で、何らかの原因で血糖値を下げるホルモン「インスリン」の分泌がなくなる1型糖尿病患者を対象にした研究によると、2集団を比べる10年間の試験後、強化療法ではない集団も強化療法に切り替え、さらに10年後の心筋梗塞などの発症率を比べた。すると、最初から強化療法をしていた集団の発症率が約4割低かった。

 また、英国で、生活習慣の乱れなどが原因で発症する2型糖尿病患者を対象にした研究では、1978~97年に強化療法をした集団と、しない集団を比べた。97年までは心血管疾患の発症率、総死亡率に差はなかったが、07年時点では強化療法の方が、心筋梗塞の発症率が15%減、脳卒中の発症率が9%減、総死亡率が13%減となった。

 研究チームは「早期からの徹底した血糖値管理の効果は長く続く」と報告、この効果を「遺産効果」と名づけた。

   ◇  ◇

 日本糖尿病学会理事長の門脇孝・東京大教授は「高血糖状態は、血管内皮に障害を引き起こす。それがやがて動脈硬化や狭さくにつながり、心筋梗塞などを起こす。強化療法は、病気の根本への影響を排除する治療のため、効果が表れるまで時間がかかり、取り組んだ時間に応じて効果が続くのではないか」と分析する。血管に負担を与える高血糖状態を短期間にとどめるためにも、早い時期の取り組みが意味を持つ。

 門脇教授が注目するのは、デンマークで実施された強化療法に関する研究だ。強化療法の集団は、血糖値に加え血圧、血中脂質も、良好な数値を8年間維持することを目指した。08年に発表された論文によると、試験終了5年後の強化療法の集団の総死亡率、心血管疾患の発症率は約半分に抑えられていた。

 この試験は対象が160人と少なかったため、門脇教授らは06年から、国内の計2542人の2型糖尿病患者を対象に同様の比較試験をしている。強化療法の集団は、HbA1cを5・8%未満に抑え、血圧、血中脂質も厳格に管理する。

 薬も使うが、血糖値を大幅に下げるには生活習慣の改善が欠かせない。門脇教授は「生活習慣を変えれば、飲む薬を減らせる。試験参加者の1日の歩数も増えており、生活習慣改善のきっかけにもなっているようだ。日本人の患者の総死亡率を下げるため、効果的な治療法を見いだしたい」と話している。

 

※毎日新聞 2009年9月18日 東京朝刊

東京都心の皇居外周(1周約5キロ)を走る「皇居ラン」のブームが続いている。最近はサポート施設や関連サービスが充実して人気を後押ししており、都心を駆け抜ける爽快(そうかい)感を楽しむランナーはさらに増えそうだ。

 昨年10月の平日に千代田区が調査したところ、午後6~9時に走るランナーは延べ約4500人に上った。官庁が「ノー残業デー」を実施する水曜に最も集中する。警備が厳重で安全▽適度なアップダウンがある▽信号がない▽周囲の景色が楽しめる--などが人気の秘密だという。

 「皇居ランナー」から国際大会で優勝するまでになったマラソンランナーの谷川真理さん(47)は「ここ数年で見違える光景になった。女性が増え、底辺が広がった」と話す。東京マラソンを機にブームとなり、ファッション雑誌でもランニングが特集されるようになった。皇居周辺でもピンクや黄色など色鮮やかなウエアに身を包む女性ランナーが目に付くようになった。

 グループが多いのも特徴。ある女性会社員(31)は「皇居を走っていると周囲に話すと、私もやりたいと集まってくる」と話す。着替えやシャワーができるランナー向けの施設も周辺に10カ所以上できた。女性専用施設も登場した。

 毎日新聞社とKDDIは10日、ランナー向けシャワー施設「Run Pit by au Smart Sports」をパレスサイドビル(千代田区一ツ橋1)1階にオープンする。東京メトロ東西線竹橋駅に直結。シャワーやロッカーのほか契約シューズロッカーも備え、女性用に個室の着替えスペースとパウダールームも設置する。問い合わせは同施設(03・3286・8921)。

 

※毎日新聞 2010年7月8日 東京夕刊

「薬の処方を考え直してもらえませんか」。横浜市立大付属市民総合医療センター(同市南区)は、向精神薬の過量服薬で自殺を図って救急搬送された患者の通院先に対し、書面で注意を促している。同じ処方を繰り返せば自殺の既遂につながるおそれが強まるためで、まれに「処方の中止」を依頼することもある。こうした自殺予防策は全国でも珍しいが、同センターの精神科医は「過量服薬した場合の副作用を知らない医師が大半だ」と警告している。【江刺正嘉】

 同センターは重症者専門の3次救急病院。外科医や内科医のほか、精神科医が常駐し、救命後の治療やケアに当たる。精神科医を救急の現場に置いている救命救急センターは全国でも数カ所しかない。精神科医による迅速な未遂者ケアが自殺防止に有効だと考えているためだ。精神科医は患者の回復後、飲んだ薬の種類や量、過去に自殺を図ったことがあるかなどを聞き取る。こうした情報を患者が通っていた医療機関に文書で知らせ、その後の治療に役立ててもらっている。

 この際、安全性が比較的低い薬を処方されていたり、再び過量服薬で自殺を図る可能性が高いと判断した場合は、通院先の主治医に「同じ薬をまた飲み過ぎると命に危険が及ぶ可能性が高い。処方の再考をお願いできませんか」と連絡。処方薬の種類や量に注意を払うよう求める。それでも同じ薬の処方が繰り返され、患者が搬送されると、「この薬の処方は中止していただけませんか」と依頼することもまれにあるという。

 センターの山田朋樹医師は「精神科医は用法、用量を守って薬を飲んだ場合の副作用については勉強している。しかし、過量服薬した時の危険性は大学でもほとんど教えられていないので、知識があまりない」と指摘。「まず医学部でもっときちんと教えるべきだ」と提言している。

 同センターが03年から05年にかけ、自殺を図って搬送された患者の中で、医師の聞き取り調査に応じた320人について手段別にまとめたところ、男女とも過量服薬(男36%、女57%)が最も多かった。

 

※毎日新聞 2010年6月27日 14時29分